2.皿屋敷市

「じゃ、はいよ。またなおっさん。ほれ、足がたきてんだから。寄り道すんなよ」

宵明けまでねばった爺さんを送り出して幽助は屋台をたたみ始める。

夜明けのオレンジが少しずつ見えてきた。

吸った煙草がしみて、目をすがめる。腰のストレッチなど少し。

と、不意に魔界の誰かの気配がした。

この素早さは、と意外な来客に幽助は態勢を整える。

腕組みをしてにかっとくわえ煙草で飛影を迎えた。

「おう、久しぶり」

挨拶にとりあわず、飛影は口を開く。

「煙鬼がおまえに会いたいと言ってきているらしい。軀ともどもだ。個別で用件もあるようだから長めに来てくれると助かる。」

幽助は飛影の用件にとりあわず、にやにやしながら

「あ、おまえ残ったラーメン喰ってく。桑原んちとかのぞいてくの。」

飛影は鼻を鳴らして

「用はそれだけだ。あとは躯か煙鬼に直接連絡してくれ。」

外套をひるがえして闇の深い方角に消えた。

久しぶりだっていうのに余計な口も聞かないで去る様子に幽助は頬がゆるむ。変わらない。

とはいえだいぶ背が伸びたんじゃないか。

ちょっと下世話な顔をしてにやつきながら幽助は寸胴鍋を空にし、ひとまず屋台のカギを閉めて、ひとりごちる。やることやってる顔つきだな。仲良くやってんな。

とりあえず、しばらく店を閉めないとなあ。今日中に抱えてる依頼を整理して蛍子に報告して北神に連絡とっておくか。うん。とりあえず、寝んべ。寝てから考えよう。

しけもくになったハイライトを指ではじいて彼は家路に着いた。