1.魔界からの打診

 

まあ政治の話が出るのは当然だ。

打診とか裏工作とか一切抜きは初回でせいぜいだろう。

風穴を開けた奴の功労はもちろんあるさ。

だからあいつをまじえて話したいんだ。

躯は昇龍を飲みながら飛影にぼつぼつと話す。

そういうわけで飛影、ユウスケを呼んでくれ。

煙鬼から軀に次回のトーナメントについて内々の相談がきたのはもう1年前にもなる。約束の三年後から時はかなり過ぎている。

軀はあまり関与したくないと考えている。じつのところ煙鬼もそうだった。とくに彼に関しては隠居組が旧友雷禅の死とその息子ユウスケの出現に共鳴していたのだから。そろそろまた隠居したい。勢力争いにのっかりたくない。しかしながら一度上に立ってしまったものはある程度次に繋げないといけないわけだ。

もうひとつ。戦闘したいという欲求を持つ魔族が人間界と交流をおおやけに始めた以上、この欲求は少しずつ形を変えなければ立ちいかないのではないか。躯と煙鬼が次回のトーナメントについて検討するとき、いつもその問題に立ち返る。

多くの妖怪の本能にも近い、戦闘への欲望。平和的統治の均衡の維持。煙鬼と軀は次回のトーナメントで戦闘への欲望を野放しにした政治が始まったときを危惧している。平和統治の流れを変えるには魔界は人間界に近づきすぎている。

権力者たちは、言い出しっぺを呼ぼうじゃないかという話にまとまった。雷禅の息子にあいたくなった、というのもある。シンプルに立ち返りたいときは、あの息子を呼び出すのがいちばんだ。