Tonight, The Night of Thunderbolts.
5.
「黒の章を、観たことがあるか?あのなかに幼女の虐待を目の前にぶら下げられた雄犬の映像があるんだが、無様なんだ」
最後の波を味わう躯の上で、飛影が呟く。
「ぶざま?」飛影の後ろ首に手を添えながら躯が問う。
拘束されているのに、犬のくせにずっと腰を振り続けてやがる。
オレや奇淋や、お前の配下みんな無様なんだ。
最後のほうは寝息にまぎれた。
躯は飛影を殺そうと思えば殺せるが、殺してやることはない。
わかちあいたいほどの気に入りの意識を持つ、躯の心をとらえたゆえに躯をふたたび自由にした、恋情の獲物だからだ。
だからいつもコイツのうなじに手をあてて、殺せる準備をしておいてやる。躯はそう思いついて、芝生の上に寝転がるような気持で笑った。
翌日の正午過ぎ、物見台に姿を現した躯は煙鬼から伝達された次の進路を指示した。雷鳴の旬は過ぎたらしい。部下は推察する。今年は一週間の滞在だった。元筆頭の飛影はすでに進路の先にある懸案障害を探索し始めている。以下もそれぞれの任務につく。
1時間後、百足は同層9時の方向に進路をとった。