Tonight, The Night of Thunderbolts.

2.

 雷鳴をくぐりぬけパトロールを続けながら、飛影は『黒の章』に記録されたある犬の姿を反芻していた。

幼い人間の女を杭に縛り付けて四つん這いにさせ、黒い雄犬に犯させる男たちがいた。雄犬が果て、幼女に獣の精を放った後それをチャックを下ろしながら輪になって眺める男たちの映像。

雄犬は鎖につながれていた。人間の男たちが犬に続いて幼女を凌辱している間も犬はペニスを屹立させ、舌を出して腰の律動をやめなかった。あさましい獣の姿。犬自体は精を使い果たしているはずなのに、人間の欲情に共鳴した反応だった。人間と獣との性行為にではなく、あの映像の下卑た悪意そのものに興奮したものだ。犬の姿を延々と映し続けることで愚かな獣性を演出していた。へどが出るほど下卑ていて、それがよかった。

 あの犬の姿は今のオレでもある。そうひとりごちて、飛影は鎖に繋がれた犬になぞらえる自分に唾を吐く。もう、待てる余裕を失くしている。はやく夜になればよい。今日割り当てられた義務から放免され、照明を落とした百足の中を自由に動けるまで。 闇をまさぐって百足最奥の部屋にたどり着き、彼奴がオレを認めるまで。 そればかり思うオレと鎖に繋がれていたあの犬にたいして変わることはない。百足の通路を飛影は頭でなぞる。たどりついた目の前のドアを開け、さらに幕の奥へ。得体のしれない妖力とはかりしれない実力をもったこわい女がだらりと寝台にもたれているはずだ。